隣人

 いまのアパートに住み始めて3年が経った。当時も相変わらず社交性が皆無だったので入居するにあたって両隣、上階、下階の住民に挨拶をしなかった。そのため、どんな人間が暮らしているか知らないし、俺は極力住民に合わないようにしてることもあって、「おはよう」「こんばんわ」の挨拶もしたことがない。住民からヤべー奴だと思われてる違いないし、そんな俺がアパートの住民について書いたものなら本当のヤバい奴だ。そして俺はヤバイ奴なので、隣人について少しばかり書くことにする。

 隣の住民が女性であることは去年の年の瀬に知った。キャリーバックを自分の横に置いて部屋の扉の前に立っている姿を見た。そのキオクだけはある。そのあと自分がどうしたのかは全く覚えていない。だから挨拶をしたのか、お互い無言でそろぞれの次の行動をとったのかも分からない。ただ、キャリーバックを自分の隣に置いて部屋の扉の前に立っている姿だけを覚えている。それは、ひとめぼれの感覚に近い。

 

 

 隣人は廊下に傘を広げて乾かすという特徴がある。他の住民は扉の取っ手に傘をひっかけて雨雫を落とすぐらいで、広げて干すという行為を及ぶものはいない。

 いつものごとく雨の日になると廊下で傘を広げて干していた。雨の日によく見られる光景を見ながら、今回は2本の傘が干してあることに気付いた。その時はただ奥の部屋の住民は2本も傘を広げられて廊下を通りずらいだろうなぐらいしか思っていなかった。

 最近、雨の日にると必ず2本の傘が干してある。それはつまり、そいうことなんだなと悟りショックを受けた5月。