時化

時化(しけ)

 僕たちは直江津港から佐渡島小木港に向かうためフェリーに乗り込んだ。船内放送で現在の海の状態が荒れていることと出発したら席から立たないようにとアナウンスされる。海が荒れているのかとスマホを弄りながら聞き流す。友人が船内販売されているラスクメロンパンを買っていたので一口強請ったが断られた。特にお腹もすいていなかったためすぐに引き下がる。

 フェリーが港をたち荒れた海へ出航した。すぐに体に波の揺れを感じる。スマホの画面を見ていたら酔いそうだと感じてポケットにしまった。隣の友人は目をつむっていた。今度は船が大きく上下に揺れだす。乗客たちから軽いどよめきが起きる。波の揺れが収まる気配はない。断続的に波の揺れが体を伝い、三半規管が狂いだす。そして自律神経が失調した。体から血の気が引いていくのような感覚に陥り、体が痺れだす。呼吸も乱れていく。自分の体が弱りきっているとわかった。

 頭痛程度の船酔いはするだろうと予想はしていたが、それを上回る不調に陥ってしまった。結局3回嘔吐した。周りの乗客もこの揺れで体調不良に陥っており、船内のトイレは洗面器も小便器も大便器も吐しゃ物だらけだった。

 もう船の旅は一生選択肢から外すと誓った日になった。